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政治に関心のないひとはいるが、政治に関係のないひとはいない(1)

 

 

 

『亀井静香、天下御免!』

岸川真      河出書房新社   2017/6/12

 

 

 

政治に関心のないひとはいるが、政治に関係のないひとはいない

・小沢氏がベトナム戦争で指揮を執ったボ・グエン・ザップ将軍を敬愛するのに対し、亀井がエルネスト・チェ・ゲバラを尊敬しているのは好一対だと思う。

 

<大統領選挙>

(亀井)オバマは16%しか黒人がいない中で大統領に当選したでしょう。米国の人種差別はものすごいものですよ。地域によっては、有色人種を人間だと思っていない。その低いパーセンテージの中からオバマは、大統領に就任した。格差社会の米国では23%の人が富を独占している。オバマが当選したのは、低層の人々がオバマなら数々の利益を守ってくれると思ったから。しかし、そのオバマ大統領も議会の壁に阻まれたまま任期を終えようとしている。サンダース候補が代表に選ばれなければヒラリー・クリントンでなくて、トランプが勝つ。なぜなら富裕層とインテリがヒラリーを支持しているが、サンダースとトランプは貧困層やウォール街、インテリ政治に飽き飽きしている大衆が支持してる。サンダースが抜ければザーッとトランプに票が集中するのは自明です。勝つのはトランプよ。

 

<小池都知事人気について>

・(亀井)都議会議員も同じ穴のむじなですよ。自分達が決めておきながら、元知事が悪いという。韓国では前大統領を弾劾して追い落とし、それで自己の正当性を高めるような政治風土があるけどね、日本でもそうした悪しき風潮が出始めてますよ。何よりメディアがだめです。国をどうするのかといった視点がないばかりか、ただ面白可笑しく、ただの漫才中継にしてしまってね。東京は大阪の比じゃない、小池新党という実体のない幽霊にとらわれてしまう。それで自民も民進党もなくなるリスクは高い。次の総選挙で自民党は220から230議席まで落ちます。500%落ちる。小選挙区制というのは、そういう制度だよ、2年以内にそうなります。

 

これを傘寿80歳、無所属にして最高齢の衆院議員が言うのか?動くか?というものだ。

 

・(亀井)毎度言うけどね、政治に関心のないひと、これは日本、世界でも大勢いるが、政治に関係ないひとはいないんですよ。

 

<原子爆弾>

・あの時、戦争末期だったから食糧難で校庭が全部芋畑だ。そこで野良仕事の作業が終わっても芋畑に残ってたら、西の方角がカッとまばゆい光が輝いた後にドロドロっという地響きだ。それで山の向こうから妙な色したキノコ雲がブワーッと昇った。新型爆弾というのは、逃げてくる避難民から知ったんだ。長姉の知恵子は女学生でしたからね。すぐに救援活動をしたせいで二次被爆したんです。二次被爆というのは認定をなかなか受けられなくてね、大変苦労したようでした。クリスチャンだった姉に連れられて教会や日曜学校に連れて行かれたものですよ。生粋の文学少女で、戦後は大阪の聖心女学院で先生をしながら句作に励んでいました。句集に「白血球測る晩夏の渇きかな」というのを遺しています。

 アメリカの原爆投下に関しては、明らかに戦争犯罪だと思う。16年にオバマが広島へ来たが、謝りもしない。来ないほうが良いと思ったので、私は抗議した。訪問を喜ぶ国民がほとんどだが、冗談じゃない。それでは原爆投下で戦争が早期に終わったと信じるアメリカ国民と五十歩百歩ですよ。あれはやってはいけなかったのだと、犠牲者を悼まねばいけない。日本が戦争を起こしたことをアジア諸国に反省せねばならないのと同じく、戦勝国であっても歴史に責任を負うのが、死んでいった者への義務だと思うんだ。

 

死刑制度廃止

・これもやらねばならない。凶悪犯罪が取り上げられると死刑死刑と騒がれる。これに反対すると投票が減るというんで議員連も減ったよ。ここは前にも語ったけど重ねて言います。

 日本人は仇討礼賛、忠臣蔵礼賛が根深いんだろう。目には目を歯には歯をという、そういう風潮をよしとする。これを覆していくのは至難の業だ。しかし日本にとって、今から絶対に乗り越えにゃいかんことだよ。

 

<地方自治>

・山村の集落が高齢化で消えていっている。私は根っこの会という超党派でドクターヘリを出させることに決めた。お医者さんを運んで、僻地を診察して回る。地方自治体が一文も金を出さずやれるようにしたんだけど、手を付けない。

 なぜか。地方自治体はそんなことをせんでも、爺ちゃん、婆ちゃんは十分に面倒見ている。だから、そんなことはいらんことだという感覚なんです。ドクターヘリなんか余計な仕事で面倒だ。市町村自体が嫌ってるわけですね。

 

・心ある自治体関係者や地元企業の方は多い。まあ大方の地方にいる親方日の丸は働かないから、金が回らなくて困っている地元企業に金をどんと生ませる仕組みを作ってやるべきだ。そこから始めないといかんと思って、私の会社も脱原発事業、太陽光発電やバイオマス発電に参画させることにしましたよ。

 

<政党ではまとまらない議会>

・今や政党で括るのは無理ですね。個ですから。個の行動といいますかね、そういうことにザーッと拡散して行っています。だから政党で括るとして何で括る?政策言うても政党の垣根じゃ括れんでしょう。

 

<定年制と機会均等、小選挙区制>

いま最高齢の衆議院議員になってしまいました。自民党内で定年制を設けたがあれは必要はないと思う。小僧だろうが、老いぼれだろうが有能なら議員でいるべき若ければ気力、老いては知恵を示せればいい。同じように女性の機会均等と称して数字を出して、その数に合わせて人材を出せという。これほど女性を蔑視したやり方はないよ。

 かつては派閥の領袖の年齢が高かったわけです。その上で徒弟制度じゃないけれども、政治のいろはを年寄りから習うというような環境はあった。この知恵の継承は大事なんだな。政治には技術がいるからね。

 あとは選挙制度だな。議員議会レベルを落としているのは小選挙区制が原因です。お互いに競争して出てこなくなった。競争すればね、力のあるやつが出てきます。競争をなしにしちゃったらね、ひ弱なやつでも条件さえあれば、バッジを付けちゃう。そういう調子でチャチな人材が議員になるから嘆かわしいよね。でもソレ、選挙民にそのまま返ってくることも知ってほしいな。チャチな政策を押し付けられるのは、ちゃんと選ばなかったせいだ。

 

<政局の行方>

・もうリーダーがいないからね、どう転んでも政治の冬が来てしまうよ。晋三総理もこのままずっとというわけにもいかない。かといって野党共闘から現れる状況ではない。

 

・理想を言えば、まあいっぺん、民進党も自民党もどこもかしこも、全部チャラにしてしまったほうがいいよ。国民感情としてもそうでしょう。政党じゃないと金が入らない仕組みがあるからピーピー言っているだけだ。政治改革は全部自殺行為だった。小選挙区制で党の多様性を殺し、政治資金規正法でもそうです。政党法で信念があって脱党したくても容易に抜けられなくなった。

 まあ、次の選挙では自民党は大敗するよ。黙ってても議席は減る。公明党の集票力も低下した。だからどこも目減りする。数合わせが大変です。安倍政権が停滞してるせいで、与野党はモヤモヤしているよ。そこで暴れるやつが出るか出ないかで大きく変わる。いまの自民党執行部も喋ることはずっと同じで新味はない。民進党だって原発廃止も足踏みしてあやふやになるくらい定まらない。電力労連の30万票を当て込んで日本のエネルギー政策を誤るなど笑止千万だよな。バーカ、と言ってやる。

 

労働組合は堕落した

・連合の言いなりで政権奪取の気がない民進党に未来はないよ。連合が泡食うような政策出してみろと言いたいね。奴らは労働組合だ。自民党には行かないよ。共産党にも行かない。ぜったい離れっこない。だったら遠慮なく攻めればいい。

 いまや組合なんて労働貴族もいいところです。だらしなく私利私欲に走るようじゃブルジョア的堕落だよ。

 この間、自主・平和・民主のための広範な国民連合の集会に招かれて出かけたんだ。そこで挨拶したんですよ。

「皆さん一生懸命、労働運動や政治活動をおやりですね。だけど、現在、非正規雇用者を含めて働く人間から眺めると、あなた方は組織に守られたセレブですよ。それは自覚なさって行動されたほうがいい

 露骨に嫌な顔をする者もいたね(笑)。どこかの委員長が「先生にズキンとくる言葉をもらいました」と述べに来たけどさ。まあ、労働貴族の趣味みたいになっているわな、いまの運動は。政治家も市民活動家も命のやり取りをするんだという気概がない限りは理想の実現に一歩も二歩も進めんよ。

 

人生、ただただ進めの巻

・(亀井)まあハチャメチャな生き方をしてしまっているからな。そこは笑って読んで貰えたら有り難いね。国会議員も13期連続当選で、39年国会議員もしている。会社のオーナーで無所属議員。人生糞面白くもないと思っている人たちへの応援になればいい。途中でドロップ・アウトしてもまたやり直しできるよっていうな。断崖絶壁から落ちた状況であっても、ジジィになってもさ、逆境をバネにして元よりも飛び上がれるんだからね。

 

<健康>

――亀井さんは摂生ってしています?

(亀井)してますよ。プールを歩く。全身運動をしながら。これ1時間半連続してやる。だからプールに通っている人はビックリしているよ。80の爺さんが熱心にやってるから。2キロのダンベルを1003セット、スクワットを70回。毎日寝る前にやっているよ。そういうことをやっても足が弱る、残念ながら。2ヵ月に1回くらい血液検査をやる。数値が全部良くなったよ。医者がビックリしていた。段々若返っているんです。これでまだまだ働けるよ。

 

<油絵>

――亀井さんはこうして事務所でも油絵を描いてますね。絵を描こうと思ったのはいつ頃からですか?

(亀井)これは銀座で画廊を出していた福本邦雄さんがいる。共産党の福本イズムの提唱者、福本和夫さんのご子息です。邦雄さんは共産党を離れてから竹下登さんの傍におったんです。私を可愛がってくれましてね。邦雄さんが画廊をやっておられたんで、「絵というのは面白いよ、亀井君」と誘われてね。それで描く気になった。

 

<会社オーナーとして>

――この事務所は亀井さんの会社の中にあるということでいいのかな?

(亀井)設立者で、オーナーという役割です。この警備会社JSS、警察庁から頼まれて創立したんです。警察庁に世界のテロ情報、色んな治安情報を集める力が無いから作ったの。きっかけは日本航空と警察庁が主でしたね。まさかここまで空港警備などで成長するとは思いもよらなかった。最初は5人とかですよ。それが今じゃ2千名。設立して30年だけど、オーナーですが株式配当を1回も貰ってない。貰おうと思えば相当に受け取れるんじゃないかえ。給料べースアップか福利厚生に使えばいい。毎月開く役員会で、社員は皆、家に帰れば1国の主なんだから大事にしろと言ってます。

 

政治家は全てのひとに迷惑をかけている

――政治家という仕事、長い事件を経て、これを亀井さんはどうお考えですか。

(亀井)まず、なりたいという者が来たら、ただバッジつけても仕方ない。やめときなさいと言いたい仕事だね。なりたいとして何をどうやりたいか。コレが大事で、そうでなければなっちゃ駄目だ。やる以上は死ぬ気でやれ、です。

 

・この仕事は家族、そして親しい人に迷惑をかける。人間というものは、生きている限り人を傷つける生き物だという認識があります。多大な犠牲を払いますから、本人以外にね。親しい政治家の息子さんである二世議員が「家族に迷惑をかけたくない」とか言うのでバカタレと叱った。政治家である以上は既に迷惑をかけている。そんなことに気がついてないなら阿呆だ。いまの政治家は応援しているひとへの贖罪や感謝の気持ちがねえんだ。自分の力でなったもんだと過信している。だから止めとけと言うんだ。

 

<この世の底から睨む目が>

(亀井)だからこうやってね、栄耀栄華で暮らしていて、エラそうにあなたに話していてさ。後ろめたさなんてねえと断言しながら、俺は偽善者だなと思うわけだよ。善人ぶってるなとね。どっかこの社会の隅からじーっと下からね、底に住んでいてね、底の底からじーっと俺を上目遣いで見ててね、ふーん何を言っているんだアイツは、そういう眼が、俺をじっと睨んでいるじゃないかと感じられてならないんだ。

 

<ゴミ掃除が終わらない>

(亀井)政治家になろうと思った時の目的、ゴミ掃除が出来てない。未だにやり残しがいっぱいあるんです。

—―だから枯れられないんですね。

(亀井)警察官だった時に感じた社会への憤りをね、そのなんと言えば良いのか、人生の借りを返せてない。日本の闇の部分、そこに職務として棲んでいた。部下も斃れ、追っていた者も斃れた。どうしてこうなったという思いがある。まだ失せることがない。ゴミ掃除に入ったらゴミだらけの上に、新しいゴミが増える。社会の歪みを取り締まろう、法で矯正しようとしているが、それだけじゃダメだ。却って逆効果になる。社会の歪みを取り締まろう。法で矯正しようとしているが、それだけじゃダメだ。却って逆効果になる。ゴミ掃除は大変なんだよ。どうして終わらないのかと思う。

――13期連続で代議士を続けてもゴミ掃除が終わらない、と。

(亀井)いつも言うのはね、いつもあちこち講演に行くでしょう。そのときに最初にいう言葉があるんです。「あんまり評判の良くない亀井静香です」。評判が良くなっちゃゴミ掃除は出来ないものな(笑)。

 

<俺の核>

――亀井さんのルーツというものはやっぱり山間の風景なんですね。

(亀井)ソレは間違いない。

 故郷の須川で隣に住んでいた、大迫さんの封書です(財布から古い封筒を取り出す)。94歳の時に私へこの封筒へ10万円を入れて下さった。政治に使ってくれと。ここに「谷間の美田は草原に/時の流れの悲しけり/美しい国とは昔の言葉/国の未来が思いやられる」そう書かれています。大迫さんは大金を託してくれた。これは私の心に突きささったままです。

 

<経世会のホープ小沢一郎>

・経世会は田中派という利権組織から増殖した組織です。云わばマフィアみたいなものだ。小沢一郎が飛び抜けてるわけだけど、彼はネゴシエーションをやって物事を進める人じゃない。絶対的権力を握れる立場に立つと、大きな仕事をする男だ。そういう人だからね、細川政権を作るような荒業が出来る。話し合いとか全く苦手そのものだな。その意味で異才の政治家です。

 

さらに言うと政治改革四法もね、小選挙区制にしてしまって議員の多様性が失われた。金のかかる中選挙区制だったが、党の執行部に牛耳られて政権批判が出来なくなり、ホントにいまの自民党なんか活力がなくなった。

 また国連平和維持軍に自衛隊を参加させて普通の国だという基準もよくわからない。派遣する必要性は感じないんですよ。専守防衛でいい。防衛費を拡大するのはいい。ミサイル防衛やシーレーン強化でね。だけどなんだって米国の戦争に付き合っていいことがあるのかさっぱりわからない。普通の国というのは普通に安心して暮らせる国じゃないのかね。

 

 

 

『「中国の終わり」にいよいよ備え始めた世界』

宮崎正弘   徳間書店   2015/10/29

 

 

 

<半値8掛け2割引>

・暴落の終着点は「半値8掛け2割引」と昔から言われるように、大雑把に見てもピークから68%下がる計算になる(じっさいに2008年から09年にかけて上海株は71%下げた)。

 

<株式大暴落が次にもたらす災禍とは?>

・次の大暴落は必至の情勢となっているが、中国に残された手段はあるだろうか?可能性は2つあるように見える。

 第1は市場の閉鎖である。1カ月ほど思い切って株式市場を閉鎖すれば、この間に様々な処理ができるだろう。なにしろ一党独裁の国ならばこの緊急事態を乗り切る強引な手段も出動が可能である。

 

 第2は通貨の大幅な切り下げである。

いまの人民元は完全な変動相場制への移行が難しいうえ、ドルペッグ体制となっているため、対ドル相場を30%程度切り下げるのである。「そんな乱暴な」と思われる向きもあるかも知れないが、実際に中国は1993年にいきなり33%も通貨人民元の切り下げを行った「実績」がある。

 これにより輸出競争力が回復でき、若干の海外企業の直接投資も復活する可能性がある。

 

・デメリットは石油、ガス、鉄鉱石など輸入代金が跳ね上がること、もうひとつは日本に観光旅行へ来る中国人の「爆買い」ツアーが激減することだろう。というより現在の爆買いツアーはもう終わりに近く、中国人の発狂的海外ツアーも沙汰止みになるだろう。

 かくして中国の爆発的投機の時代は終わりを告げ、中国経済全体の崩落が始まる。それは連動して中国共産党王朝の崩壊の始まりとなる可能性が高いのである。

 

<米国の親中派学者も「中国崩壊論」へ>

<旧ソ連は国防費の増大に耐えられなくなって潰えた>

・米国や日本が衰退する危険性はその原因と考えられる少子高齢化の人口動態よりも、もっと見えない変化、すなわち国防費増加ではなく「エンタイトルメント」費用、すなわち「社会保障、メディケア、保険医療(メディケイド)、所得保険」の急拡大にある。日本はこれに失業保険料が差し引かれ、しかも保険料を支払わなかった人々が月100万円ほどもかかる高額の介護を受けているケースもある。

 かくして日米欧先進国や台湾、韓国などは防衛費拡大に予算を回せない隘路に陥没した。インドも貧困層の食料援助予算があり、タイ、インドネシアも然りだ。しかし中国には国民皆保険制度はなく、介護保険もなければ生活保護もない。義務教育も有料である。だからこそ狂気の軍拡が続けられたのだ。

 欧米先進国が共通して陥没した財政危機とは民主制度のパラドックスかも知れない。

 中国の次なる問題は宮廷の内部争い、権力闘争の陰湿性である。

 

・そして、「宦官と官吏による内戦に近い状況は何十年と続いた。朝貢貿易は崩壊し、比類無き明の艦隊は港で朽ち果てた。一方、海岸地域の町の住民はその後の数十年にわたって対外貿易から利益を得たが、明の宮廷はその繁栄ぶりを不快で脅威をもたらすものとみなした。官吏は近視眼的で経済的知識のない官僚の常套手段をとり、潜在的なライバルの力をそぐことにした。もはや仁の政治どころではなくなった」。

 これまで国家の興亡論については、軍事力や海の支配、地政学的観点が主流だったから右のような別の視座からの切り込みは異色である。

 それにしても明がなぜ衰退したのか。

「宮廷ではライバル関係にある各集団が皇帝の関心を引こうと争いあっていた」

 漢の場合、「皇帝への影響力をめぐって、名門一族、軍当局者、官吏である学者・官僚集団、宮廷の宦官という4つの主要な対立勢力が争っていた」

 なるほどまったくと言ってよいほどに現代中国の様相と似ている。

 

20147月に北京大学中国社会科学研究センターが発表した中国のジニ係数は0.730.4以上は暴動が多発するレベル)。まさに天文学的所得格差の破壊力によって、史上空前の不均衡状態にある現在、中国は国家の財政が一握りの特権階級によって蝕まれつつあり、王朝の崩壊が近いことを物語っている。

 

<鮮明に表れた中国共産党瓦解の兆候>

・このように、米国における対中穏健派が雪崩を打って中国への失望を表明しはじめたのである。

前述したシャンボーは、共産党体制崩壊は次の5つの兆候からうかがわれるとした。

 第1に富裕層の海外逃亡、第2に国内での言論弾圧、第3に誰もが政権のプロパガンダを信じていないこと、第4に共産党と人民解放軍にはびこる腐敗、第5に経済縮小と利害集団による改革阻止である。

 シャンボーはこう結論している。

「一度、この体制が崩れ始めると中国は長期的かつ複雑に停滞し、より暴力的な社会となるだろう」

 

・――危機管理とは考えられないこと、あるいは考えたくないことを考えることである。

 日本人が嫌がる防衛論議、日本の核武装、戦争、これら考えたくないことを、じつは真に近未来のシナリオとして考えなければならない。それは指導者の役目だ。

 

<迫り来る米中戦争の行方>

<米中戦争は不可避だとするロシア>

・こうなると、米中の関係悪化はどこまでいくか、ロシア紙『プラウダ』(英語版、2015624日付)は米中戦争の蓋然性を検証し、11の根拠を描いていた。

 その行間には米中戦争への「期待」(なぜなら「最大の漁夫の利」を獲得できるのはロシアだから)が滲み出ている。

 

<米国が想定する米中軍事衝突3つのシナリオ>

・南シナ海問題で一歩も譲らす、重大なチャンスを逃がしたのである。

偶発戦争は起こり得ない可能性が高いものの、危機を危機と認識できない指導者が、党内権力闘争の生き残りをかけて軍事衝突に出てくる場合、俄に起こり得る危険性に繋がるのである。

 たしかに国内矛盾を対外矛盾にすりかえることは歴代独裁者の常套手段とはいえ、中国の軍事外交の突出が続けば、いずれ本格的な米中衝突を招来し、結末は中国の敗北が明らかであり、中国共産党の指導力の信用が撃滅され、共産党の一党独裁は激しく揺さぶられることになるだろう。

 

<そして中国に大破局が訪れる>

<機密文書まで海外に持ち逃げし始めた「赤い貴族」たち>

・「これ以上、反腐敗キャンペーンを続行すると、指導部の安全に問題が出てくるだろう。いまですら執行部の安全は深刻な状況であり、反対派は絶滅されていない。もし、キャンペーンを続行するとなると党そのものが深刻な危機に瀕することになり、このあたりで手打ちにしないと、状況は危うくなる」

 

<中国共産党の命運は尽きようとしている>

・黄文雄氏や福島香織氏が口を揃えて言う。反日の中国人と韓国人は本当は日本が好きで、できれば日本人になりたいと願望している、と。

「来生は中国人に生まれたくない」とする若者が3分の1もいて、これは韓国でも同じ比率という。「来世はブタでも良いから中国人には生まれたくない」と回答する者もいる。いや、その数は夥しい。

 

・世代交代が著しくなり、軍人でも朝鮮戦争体験組は誰もいない。

 公式の発表より、民衆は裏の情報を選別して入手している。若者はネット世論の行間を読み、暗号で通信しあう。

 過去の話より現実の腐敗、権貴階級への不満と憎しみが噴出しはじめ、いずれ巨大なうねりとなって、より暴力的になり、社会は乱れきって無法状態に陥るかもしれないという明日への恐怖が中国の統治者の間で認識できるようになった。状況はそれほど悪化している。

 

・国家の基盤が安定を欠いて根本から揺らぎはじめ、特権階級も安穏としてはいられなくなったとき、共産党幹部自らが、「そろそろ俺たちの時代は終わりだな」と自覚しはじめる。だからあれほど夥しい中国共産党幹部が賄賂で得た資金ごと海外へ逃亡を始めたのである。

 余命いくばくもなくなったのが中国共産党である。

 

 

 

『晋三よ!国滅ぼしたもうことなかれ』

~傘張り浪人人生決起する~

亀井静香    メディア・パル  2014/11/29

 

 

 

小学校3年生のときに迎えた敗戦のショック

・吉田茂や岸信介は小さな抵抗はしたかもしれないが、大きな流れでいえば従米路線を進め、それが自民党、つまり日本の政治の主流となっていったんだ。

 

<交渉は相手の力を利用して制す合気道の極意で>

・ただ、集団的自衛権はまずかった。

 世論の大方の反対を押し切って、閣議決定で変更することをやってしまったことも。開けてはならないパンドラの箱をいじってしまったんだな。

「実際問題、集団的自衛権が使えるか」って晋三に問い質したが、

彼はただ黙って聞いていた。

使えるわけがないのだ。ダメだと話をしたが、本人も今になって「しまった」と思っているんじゃないかな。

TPPは、大企業含めてそれで得する連中もいるが、集団的自衛権の問題は、カネではなく命の問題であり、日本の平和と秩序の問題だ。

 

<純ちゃんの改革を総括する>

<「政治の従米化」「マスコミの洗脳」「国民の劣化」>

・この章の目的は、俺のほんとうの意味での敵が外来種の新自由主義であることと、その新自由主義の出鱈目な正体を明らかにすることだ。そのためには、どうしても純ちゃんの改革について語らないわけにはいかんだろ。

 あれから10年、郵政民営化とは結局なんだったのかって考えると、「政治の従米化」「マスコミの洗脳」「国民の劣化」を痛感するね。

 政治家は国民のための政治をするのではなく、それを権力におもねったマスコミが情報操作、アレンジして伝え、一方、国民も痛みを痛みとも感じず生体反応を起こさないほど劣化した。それが今も続き、ますます悪くなっている感じだ。

 あのとき純ちゃんは「官から民へ」とか、「改革なくして成長なし」ともっともらしいことを言っていたね。「痛みなくして改革なし」とも言ったが、結局、ほとんどの人に「痛みだけあって改革なし」だったってことだ。

 

・聖域なき改革とか三位一体の改革とか、改革が素晴らしいもののように思わせ、マスコミもそう誘導した。彼らのバックには、郵政民営化で得する大スポンサーがいたから当然だろう。

 郵政民営化だけを争点に、衆議院を解散して選挙に臨んだのは狂気の沙汰だった。法案が参議院で否決されたからといって、衆議院を解散するというのは憲法違反の暴挙だな。民主主義を冒涜する以外の何物でもなかった。自民党内でも多くの人が反対していたが、党執行部は彼らを脅したりあやしたりして鞍替えさせていた。

 俺は郵政民営化が明らかにアメリカからの年次改革要望書(日本の弱体化を狙う勢力や、郵政の財産を狙ったアメリカの保険や金融資本の意図した)に沿ったものであると承知していたので、徹底的に反対した。

 

・郵便にしても、簡保にしても、郵貯にしても、あるいは、それ以外のサービスを含め、郵便局は地域に密着したコミュニティーの拠点だから潰すわけにはいかないんだ。日本の重要な社会基盤の一つなんだが、やつらはそれを壊そうとした。

要は「官から民へ」ということを、十把一絡げでやるのはあまりにも単純過ぎるということ。

「改革」にしたって中身が問題ってことだよ。

 

<結果は「働けど働けど我が暮らしよくならず」>

・こ10年、改革によって日本がよくなったと思っている人はほとんどいないだろう。いるとしても1パーセントのカネを握っている連中だけだろうな。あとの99パーセントの人々の生活はますます苦しくなって、全然いいことないと感じているのではないか。

 つまり、その改革が国民のためではなく、自分たちに都合のいい、つまりバックにいる新自由主義のグローバリストたちに都合がいいものだったってことだ。日本の財産が掠め取られ、「働けど働けど我が暮らしよくならず」という風になってしまった。その、日本人の富を吸い上げる仕組みが、この10年でつくられてしまったんだ。

 

<我が反骨と抵抗の半世紀>

・カネがないからアパートにも住めない。それで、東大・本郷のキャンパス内にある合気道部の道場『七徳堂』の隅に布団とミカン箱を持ち込んだ。俺は合気道のヌシだったからできたんだ。

 全日本学生合気道連盟を俺はつくって委員長だった。東大の合気道部を同好会から部にしたのも俺だ。副委員長が大平(正芳元首相)さんの息子だった。彼は慶応の合気道部のキャプテンで金持ちだから、飲んだら全部払ってくれた。

 家から仕送りをしてもらうわけにもいかない。飯が食えない。仕方がないからアルバイトを見付けるしかなかった。石油モーターの消費実験をするアルバイトを見付けてきた。夜間のアルバイトもやって、朝方に帰ってきて、勉強を始めたんだ。

 

<嵐を呼ぶ警察官時代>

<自治省のおごりでピンサロ三昧>

・あまりにやることが派手だったから亀井対策として、後に新党さきがけの代表となる武村正義が自治省から地方課長として埼玉に送られてきたくらいだ。

 で、夕方5時くらいになると、「亀ちゃん、行こう、行こう」とハイヤーを待たせて誘いにくる。俺も嫌いじゃないから、ピンクサロンなんかへ1軒、2軒と付き合ってやった。

 ところがあいつは、「亀ちゃん、もう一軒行こう」って誘うんだ。仕方がないから付いて行ってやったけどね。

 あいつが村山政権で大蔵大臣をしているとき、大蔵官僚のノーパンしゃぶしゃぶ接待疑惑が持ち上がったんだよな。あいつが彼らを、「首にする」と言い出したから、「何言っているんだ。おまえだって、遊びまくったじゃないか」と脅すと、「昔のことは言わないでくれ、言わないでくれ」って懇願してきた。

 結局、懲戒処分にするのを諦めて処分保留にしてたな。

 

社会のゴミをなくすために国会を目指す

<誰にも相談しないで出馬を決意>

・いくら警察で頑張っても所詮、社会のゴミ掃除だ。社会のゴミを出さないようにするしかない。そんな考えで政治家になろうとした。

 

<晋三の親父さんから「帰ってこい」と言われ>

・代議士となり、自民党では清和会に入った。俺を推挙してくれた永山先生の流れからだ。当時は晋三の父晋太郎さんが派閥の長で安倍派と呼ばれていた。

 実は一度、清和会(安倍派)を除名処分になっている。

 

<政権内でも暴れまくり>

<今でもスチュワーデスに礼を言われる俺>

・村山政権が誕生して、野坂さんが俺に、「組閣では、好きな大臣を選んでくれ」と言ってきた。俺も久し振りに日の当たるところでやれるんだなあ。よかったわいと思って涙が出たよ。そして運輸大臣になったんだ。

 

・「ダメだ。俺は認めない。日航に取り消させろ。スチュワーデスは、お茶汲みじゃない。あれは重要な安全要員なんだ。同じキャビンで同じ仕事をしているのに待遇が全然違う。更に、安く使おうというのか。そんなことでコスト削減を図ろうなんてとんでもない話だ。ただちにやめさせろ」と指示した。

 

・どの会社でも試用期間っていうのはあるから、3年間は試用期間。アルバイトじゃない。3年経ったら無条件で正社員にする。事故のときは正社員並みに扱うという文言を、自ら書いたんだ。給料も2倍以上に引き上げた。

「これは最終案だぞ。文句があるなら辞めろ」と通達したんだ。今でも、国際線や国内線に乗っていて、年配のスチュワーデスから、

「私は、先生のおかげでアルバイトからスチュワーデスになれて、今は責任者の立場で働いています」と何人も礼を言うんだよ。スチュワーデス神社ができたって言われるくらい、俺は救いの神になったんだ。

 

<ハワイでゴルフをしながら28000億円の財源確保>

・俺がハワイでゴルフをしていたわずか10日ほどで、223事業を中止にし、28000億円くらいをカットしたのだ。

 結果、28000億円の財源をつくったわけだ。財源づくりまでこっちはしてやったんだから、大蔵省がガタガタ言うことではない。そして、建設省、農林省に必要と思われる新規事業をバーンと付けた。

 

自衛隊全軍をすぐ福島に派遣しろ!

・「どのくらいだ」

8000名の陸上自衛隊を派遣しました」

「おまえ、何を言っているんだ。こういうときに頼りになるのは、自衛隊と警察と消防だぞ。特に自衛隊だ。陸海空を全部派遣しろ。全指揮を統幕議長にとらせろ」と命じたのだ。その後、菅に、「副総理をやってくれ」と2時間近く口説かれた。菅は、俺が一応剛腕だというイメージがあるから、それを副総理にすることで格好付けようとしたんだ。

 

<真の敵は外来種の新自由主義>

<人類は文明から大反逆を受けている>

・自然環境だけじゃない。人間社会でも異常が常態化し、人々の心も文明から反逆を受けている。原発事故や公害、あるいは薬害問題など、人々の命を脅かすことが頻発している。

 

<人々の幸福や生命までも奪われていく>

・彼らは国を超え自由に経済活動をすることで人類の繁栄をもたらすと考えているようだ。「グローバリズム」(世界主義)とも呼ばれているが、要は自分たちが独占したいだけ。自分たちの価値観やルールを「グローバルスタンダード」とか言って世界中に押し付け、自己の止まるところを知らない欲望を、ただ満足させようとしている連中である。

 

日本人よ、洗脳から目を覚まして立ち上がれ

・そんな新自由主義的なグローバリズムに対して、「冗談じゃない!」と声を上げる人々が現れた。何が正しくて何が間違っているかを自己判断でき、行動できる人たちだな。

 お膝元のアメリカでもヨーロッパでも。またアジアの国々でも新自由主義的なグローバリズムに対して、デモや言論による抵抗と反発の動きが起こり始めている。

 

外来種の思想ではなく土俗の政治が日本を救う

<地方再生は農漁業がカギ>

<日本人の根っこは農漁村にあるんだ>

・そこにTPP(環太平洋パートナーシップ協定)でしょ。TPPは新自由主義の典型的な政策。日本の農家が大打撃を受けるのは明らか。関税が撤廃された、安い米やら野菜、果物が大量に入ってきたら、間違いなく壊滅する。アメリカやオーストラリア、ニュージーランドといった農業大国と戦ったら、中小零細の日本の農業なんかあっという間に木端微塵だ。

 今でも食料自給率は40パーセントだが、TPPでは10パーセント台になると言われている。文明の反逆を受ける現在、天候不順などで日本に食料が入ってこないと、餓死者が続出することだってあり得るんだ。俺は、農業は森の番人、漁業は水の番人として大切に守らなければならないと言ってきた。これらの風景は日本人にとって心の原風景だけでなく命の支えでもあるんだよ。

 農業と漁業は食糧安全保障の要。それを価格で勝負が決まる自由競争の場に出すということ自体、そもそも考えが間違っている。

 

<狙われた農協と農業潰しの背景にある意図>

・食べるものがなければ、いくら最新の車や電化製品があっても生きていけない。日本にとって大事なのは、TPPで輸出を促進したり安い農作物を輸入したりするのではなく、日本の農業を立て直すことだ。

 

アベノミクスは絵空事だ

<所信表明演説から消えたアベノミクス>

・今まで、わかっていても書かなかったが、各週刊誌もいろいろ書き始めている。隠し子騒動の話まで飛び出した。上り調子のときには書けなくても、今なら大丈夫というところだろう。見るに敏というか、マスコミもいい加減なものだ。

 

<晋三に注意した、博打場となった株式市場>

・だから俺は総理に直接電話でも言ってやった。

「なあ晋三、今、兜町はどうなっていると思ってる。近頃の株式市場は産業資金を調達する場ではなく、ただの博打場になっているじゃねえか」

それに対して信三から特に否定する言葉は返ってこなかった。だから心のどこかでそう思っているのかもしれないな。

 

<株価が上がれば景気がよくなるというのは嘘>

・アベノミクス実施後、株価は上昇し、兜町界隈の懐は暖かいかもしれないが、それ以外の場所で景気がいいという話はほとんど聞かない。むしろ、寂れて荒廃しているのが今の姿なんだよ。

 

<今の日本では円安はマイナス要因だ>

・現在の日本の産業構造では、円安というのは、日本人が一所懸命つくっているものを外国に安売りしていることに他ならない。

 円高対策で数兆円程度の為替介入をしたところでその効果は一時的だ。逆に投機的な動きがある中、「虚の世界」にもてあそばれるだけ。ここでも、まさにグローバルな資金を使った外資たちが、儲けている。

 もちろん為替を安定的に推移させるためにはいろいろな施策をやらなければならない。だが、実体経済を伴わず、ただ日銀がカネを出しまくって円安に持っていくというのは通貨の価値が下がるだけだ。

 

アベノミクスは日本を叩き売っている

・アベノミクスは円安で日本売りを図る政策だが、バナナの叩き売りみたいもの。日本の財産を投げうっているというもんだ。

 

黒田の馬鹿たれは欲求不満を爆発させている

・黒田は財務省では本流から外れていたんだよ。欲求不満が溜まっていたのかもしれないね。いずれにせよ中央銀行の立ち位置を踏み出し、政治的な動きになっている。これは、日銀の独立性を尊重した従来の日銀総裁はやらなかったことだ。前任の白川だって「この石頭!」と言われながらも、一応かたくなに守っていた。

 とにかく日本は、アベノミクスの下、国を挙げてマネーゲームに走っているんだよ。

 

・実体経済は小泉改革以降、ガタガタになっているから、使い道のないカネが結局、兜町に流れたってことだ。日銀の通貨政策で実体経済が上向くというのは、今の日本では絶対に不可能なこと。そんなの現場を見れば馬鹿でもわかる。

 

2本目の矢も結局空振っている>

2本目の矢もひどいんだよ。

 アベノミクスの2本目の矢は、「機動的な財政出動」ということになっているが、空振っているな。これも、晋三とそのブレーンが全く日本の現状を見ないで、外国で聞きかじった経済政策をやった結果だろう。

 

<ドブに向かって跳ぶ矢もある>

・「総理、地方のニーズに合わせた予算を組んで、実際に執行されるような政策をしないと、絵に描いた餅になるぞ」これも晋三に直接言ったことだ。

 何千億、何兆円の予算を組んでも、地域の経済が活性化していく、地場産業が元気になるような具体的な手当てをしないと、スーパーゼネコン向けのムダな公共事業に終わって、カネをドブに捨てるようなものになっちまうよ。

 

晋三を操る新自由主義者どもの大罪

<真空地帯にすーっと入ってきた竹中平蔵>

・本当は成長戦略こそもっとも重要なものだが、結局1本目と2本目でカネをばら撒き、株価、物価、消費税は上がり、景気は後退したわけだが、一部の連中だけが潤ったということだ。

 実は、総理は経済に関してはあまり得意じゃない。だから取り巻き連中はやりたい放題。人がいいから任せたという感じだろうが、国民にとってはたまったものではないな。

 だから、始末が悪いことに、小泉改革以来、日本をさんざん混乱させた新自由主義的な政策が始まった。「改革」というまやかしだ。

 

やつらの規制緩和で日本はガタガタ

・日本人が得られるべき富が吸い取られ、ますます庶民の生活が苦しくなってしまった。給料も物価も売上も上がらないというデフレスパイラルに陥ってしまったんだ。

 

<新自由主義政策で産業の空洞化が進む>

・新自由主義的経済政策では大企業に有利だが、その大企業だって当時は業績低迷で必死だったから、下請け孫請けのケアどころではなかった。

 

<働く人の懐から掠め取った恥ずべき利益>

・そんな外来種の新自由主義に牛耳られつつある今の日本。そこで大企業がやっていることは、非正規社員をどんどん増やして安い労働力を確保し、会社の利益を上げていくというものだ。その利益を社員に還元するのではなく、株主の配当に重点を置いている。

 

弱い者いじめの税制・年金・社会保障

大儲けの企業からは取らずに庶民から取る

・現在、日本の企業は全体で300兆円以上の、過去最大の内部留保を貯めている。従業員の懐に入ったり、下請け孫請けに回ったりする分を取って貯めた結果だ。今、そこに法人税減税をやると総理自身が言っている。

 結局、税制においても強者から取らないで一般庶民から取るべく、消費税という形で担税させた。しかも更に10パーセントにするという。

 

<弱い者いじめを批判しないマスコミたち>

・社会保障政策だってことごとく弱いものいじめだ。

 

 介護だって、医療だって、現政府が進めているのは、全部、お年寄りや弱者に対しての負担増だ。大病院に行く場合には、紹介状がなければ初診料を全額自己負担という話も出ている。カネのないやつは病院に行くなという感じだな。

 介護保険にしたって、年金だって受給年齢や受給期間の条件をやたらと厳しくしている。

 

社会保障に明るいはずの晋三だが

・重要なのは、その年金の基本理念だ、国民の信用を取り戻す努力とともに、個々の意識改革も大切。

 例えば、年金の必要のない金持ちまで、もらえるものはもらわなければ損だというのでは、いくら納付率を上げようが税収を増やそうがムダなんだよ。富裕層への支給は控える制度設計にしなくてはね。

 いずれにしても超少子高齢化社会を迎える以上、今のままでは持続は不可能になるし、世代間での負担の格差が広がるばかりで若い人には希望が持てなくなる。だから年金だけでなく社会保障制度全体の抜本的な改革が必要なんだ。

 晋三も、俺が自民党政調会長のときに社会部会長をやっていたから、そういう社会保障問題でついては詳しいはずなんだが、弱者をいじめて、反対に富裕層への恩恵ばかり助長するようなことをやっている。

 

この調子では日本はどんどん新自由主義的な、強きを助け弱きを挫く政策に染まってしまう。

 

 

 

『世界を見る目が変わる50の事実』

ジェシカ・ウィリアムズ  草思社 2005/4/28

 

 

 

50の事実>

1.日本女性の平均寿命は84歳、ボツワナ人の平均寿命は39

 

2.肥満の人の3人に1人は発展途上国に住んでいる

 

3.先進国で最も妊娠率が高いのは、米国と英国の10

 

4.中国では4400万人の女性が行方不明

 

5.ブラジルには軍人よりも化粧品の訪問販売員のほうがたくさんい

 

6.世界の死刑執行の81%はわずか3カ国に集中している。中国、イラン、米国である

 

7.英国のスーパーマーケットは政府よりも多くの個人情報をもっている

 

8.EUの牛は一頭につき1日2.5ドルの助成金を受け取る。年額にすると世界旅行が可能だ

 

9.70カ国以上で同性愛は違法、9カ国で死刑になる

 

10.世界の5人に1人は11ドル未満で暮らしている

 

11.ロシアで家庭内暴力のために殺される女性は、毎年12000人を超える

 

12.2001年、何らかの形成外科手術を受けたアメリカ人は1320万人

 

13.地雷によって、毎時間1人は死傷している

 

14.インドでは4400万人の児童が働かされている

 

15.先進国の国民は年間に7キロの食品添加物を食べている

 

16.タイガー・ウッズが帽子をかぶって得るスポンサー料は、1日当たり55000ドル。その帽子を作る工場労働者の年収分の38年分

 

17.米国で摂食障害を患っている女性は700万人、男性は100万人

 

18.英国の15歳の半数はドラッグ体験済み。4分の1は喫煙常習者

 

19.ワシントンDCで働くロビイストは67000人。連邦議員1人に対し125

 

20.自動車は毎分、2人を殺している

 

21.1977年以降、北米の中絶病院では8万件近い暴力事件や騒乱が起きている

 

22.マグナルドの黄色いアーチがわかる人は88%。キリスト教の十字架はたった54

 

23.ケニアでは家計の3分の1が賄賂に使われる

 

24.世界の違法ドラッグの市場規模は4000億円ドル。製薬市場とほぼ同じ

 

25.アメリカ人の3人に1人は、エイリアンがすでに地球に来たと信じている

 

26.拷問は150カ国以上で行われている

 

27.世界では7人に1人が日々飢えている

 

28.今日の米国に生まれる黒人新生児の3人の1人は刑務所に送られる

 

29.世界で3人に1人は戦時下に暮らしている

 

30.2040年に原油は枯渇するかもしれない

 

31.世界の喫煙者の82%は発展途上国の国民

 

32.世界の人口の70%以上は電話を使ったことがない

 

33.近年の武力紛争の4分の1は天然資源がらみ

 

34.アフリカのHIV陽性患者は約3000万人

 

35.毎年、10の言語が消滅している

 

36.武力紛争による死者よりも自殺者のほうが多い

 

37.米国で、銃を持って登校し退学になる生徒の数は、平均して週に88

 

38.世界には「良心の囚人」が少なくとも30万人いる

 

39.毎年、200万人の女性が性器切除される

 

40.世界中の紛争地帯で戦う子供兵は30万人

 

41.英国では総選挙の投票者数よりも、テレビ番組でアイドル選びに投票した人のほうが多い

 

42.米国のポルノ産業の規模は年間100億円ドル。海外援助額と同じである

 

43.2003年、米国の防衛費は約3960億ドル。「ならず者国家」7カ国の防衛費総計の33

 

44.世界にはいまも2700万人の奴隷がいる

 

45.アメリカ人が捨てるプラスチック・ボトルは1時間に250万本。並べると、3週間分で月に達する

 

46.ロンドンの住民は、監視カメラで1日300回撮影される

 

47.毎年、西欧向けに人身売買される女性は12万人

 

48.英国で売られるニュージーランド産キウイは、その重量の5倍の温室効果ガスを排出している

 

49.米国は国連に10億ドル以上の未払い金がある

 

50.貧困家庭の子供たちは、富裕家庭の子供たちに比べて、3倍も精神病にかかりやすい

 

<「50の事実」に何ができるか>

・読み進めていくうちに、いくつかのことが明らかになるだろう。何より、世界を取り巻く問題の多くは、富める先進国と貧しい途上国との、醜い不平等に起因していることだ。

 

私は、これら50の事実が世界を変えると確信している。>

・「思いやりがあり、行動力のある人々は、たとえ少人数でも世界を変えられる――それを決して疑ってはなりません。実際、それだけがこれまで世界を変えてきたのですから」

 

中国では4400万人の女性が行方不明

200210月、中国の新華通信社は最新の国勢調査を発表した。それによると、2000年には女児100人に対し、男児は116.8人生まれていた。そこには、かすかだがはっきりと警告の響きが感じられた。過去2回の国勢調査と比べても、この男女比は拡大している。『上海スター』 紙は、こうした傾向が続けば、約500万人の中国人男性が結婚相手を見つけられなくなると伝えた。そうなれば、家庭、経済、社会的サービスにも問題が生じるだろう。ある専門家は、自暴自棄になった男性による女性の誘拐が増えるとさえ警告している。

 

・この不均衡は、中国やインドをはじめ、東アジアや南アジアにおいて男の子を望む傾向が強いために生じた。女の子を望まない親たちは、性別診断で胎児が女児とわかると、中絶に走る。実際に生まれても、女児の多くは生後数日から数週間で殺されてしまう。親たちはそれを自然死に見せかけるために、手を尽くして警察や衛生当局の目を欺く。幸いにも生き延びた女児も、出生届は出されない。その結果、教育や福祉ばかりか、充分な食事さえ与えられない日陰の生涯を歩む。

 

・インド、中国、台湾の出生率は着実に下がりつづけて西欧並みになりつつあるが、それでも女児への偏見は根強い。

 

・出生登録をされない子供たちには、どんな運命が待ち受けているのか?法律的には、彼らは存在を認められていない。だから学校に行くこともできず、公的機関の診療も受けられない。彼らの生活条件は、ひどく限られている。

 

アメリカ人の3人に1人は、エイリアンがすでに地球に来たと信じている

30%の人々が「これまでに報告されている未確認飛行物体の一部は、他の文明からやってきた本物の宇宙船」だと答えており、45%のアメリカ人が地球外知的生命体はすでに地球に訪れていると回答している。

 

・実際、軍の発表と目撃者の言い分には食い違いがあった。エイリアンの死体が、いまやすっかり有名になったロズウェル空軍基地の「エリア51」に運びこまれるのを見たという人々もいる。1994年には、「エイリアン検死」の様子であるとのふれこみの怪しげなビデオも出回った。

 

 

 

『世界を見る目が変わる50の事実』

ジェシカ・ウィリアムズ  草思社 2005/4/28

 

 

 

70カ国以上で同性愛は違法、9カ国で死刑になる

・同性愛が死刑の対象になる国が9カ国ある。モーリタニア、スーダン、アフガニスタン、パキスタン、チェチェン共和国、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE),そしてイエメンである。

 

1979年のイランにおけるイスラム革命以来、4000人以上の同性愛者が処刑されたと推計されている。

 

・世界で70カ国以上がレズビアン、ゲイ、同性愛者、あるいは性倒錯者を差別する法律を有している。

 

・社会においては同性愛は「病気」として扱われ、ゲイやレズビアンは精神医療による「治療」を強いられてきた。

 

・しかし、多くの国々で事態は変わりつつある。20036月、米最高裁判所は、同性カップルの性的行為を禁じるテキサス州法に違憲判決を下した。この判決は、テキサスだけでなく、他の13州における類似の法律を一挙に無効にすることになった。

 

・さらに同性愛のカップルも異性愛のカップルと同じように子供を育て、家族の絆を持ち、結婚に関する判断を下すことができるとした。これらは米国憲法に保障された権利と確認したのである。

 

・米国市民自由連合はこの判決を「LGBT(レズビアン、ゲイ、両性愛者、性倒錯者)にとって、これまでで最も有意義な判例」と呼んだ。

 

・国際人権団体も同性愛を公言する人々の保護を求める働きかけで注目を集めており、おそらくはそれがまた保護手段になっているだろう。

 

 

 

『国家の実力』   危機管理能力のない国は滅びる

佐々淳行・渡部昇一   致知出版社     H23/6/30

 

 

 

<中国に対抗するための「核シェアリング」という発想>

(佐々)アメリカは日本のために核戦争はやりません。ただ、ちょっと心配なのはアングロサクソンというのは撤退するときに、焼土作戦をやって引き揚げていくのです。物を残さないで破壊してしまう。だから、日中を軍事的に破壊することはあり得ないけれど、経済的、政治的に破壊していくケースは考えられなくないんです。中国の一部になられたら困るわけですからね。

 

(渡部)日本には「核シェアリング」という発想が重要だと思うんです。そうすると中国と戦争は起きない。にらみ合っているうちに向こうはひっくり返りますよ。中国が総選挙のできるような国になれば、戦争の危険はあまりなくなるわけだから、それまで日本は核シェアリングをしたいというようなことをアメリカに対して表明すればいい。

 

(佐々)ただ、今は運の悪いことに原発事故が起き、国内で反核ムードが高まっていますからね。まず国内を説得しなければなりません。核シェアリング論にとって、これはとても困った状況ですね。

 

警察官不足で危機に瀕している国内の治安

(佐々)「ポリティコ・ミリタリー」や「ポリティコ・エコノミー」や「ポリティコ・ファイナンス」を唱えて研究する人は、いるのですが、「ポリティコ・ミリタリー」をやる人はいません。ましてや治安、防衛、外交の三点セットをすべて学んだ人はほとんどいない。私は、たまたまそれを学ぶことになったわけですね。だから、次の総理には治安、防衛、外交をやってくれる人になってほしい。今の内閣は、正反対です。「治安、防衛、外交だけはやらない」という人たちの集まりですから。

 

(佐々)私が、警察に入ったころから警察庁が言っているのは、人口5百人あたり警察官一人が必要である、と。人口が1億なら20万人の警察官が必要だと言っているのですが、なかなか実現しない。

 

・この間の1万人の増員が完成して55人に1人。

 

・しかし、諸外国と比較してみると、イタリアはカラビニエリという警察騎兵隊を入れると272人に1人の割合で日本の倍以上になっています。それから、アメリカは353人に1人。イギリスが366人に1人、ドイツとフランスがそれぞれ314人と286人です。ところが埼玉県などは現在でも639人に1人です。

 

・だから被害者が警察に助けを求めていたのに、警察は忙しいものだから「恋愛沙汰には民事不介入の原則で手を出せない」なんて言って放っておいたら、それで被害者が殺されてしまいました。あの時は、ごうごうたる非難を浴びたけれど、本当に人がいなかったんです。

 

 しかも、定員を増やさないまま、どんどん仕事が増えました。また、コンピュータ犯罪が出たり、愉快犯が出たり、犯罪の種類もどんどん広がっています。

 

<小泉純一郎元総理の知られざる功績>

(佐々)小泉さんは2回目の自民党総裁選の立会演説会で「空き交番をゼロにする」と言いました。そして、実際に1万人の警察官増員をして平成192007)年までに空き交番はなくなったのです。これはすごいと思いました。

 

 

 

『職場のLGBT読本』

柳澤正和、村木直紀、後藤純一   実務教育出版 2015/7/22

 

 

 

<LGBTを知っていますか?>

・LGBTは、Lesbian(レズビアン)、 Gay(ゲイ)、Bisexual (バイセクシュアル)、transgender(トランスジェンダー)の頭文字をとった、性的マイノリティ(少数者)を表す総称です。

 

・欧米ではアーティストからスポーツ選手、企業経営者や政治家に至るまでさまざまな職業の方が、カミングアウト(LGBTであることを公にする行為)をする例が増えています。みなさんもオリンピックで水泳の金メダルをとったイアン・ソープ選手や、アップルCEOのティム・クック、そして2015年にグラミー賞を獲得したサム・スミスなどのカミングアウトのニュースをご覧になられたかもしれません。

 

<日本でのLGBT事情は?>

・調査によると人口の5%~7%強(電通総研2012年、2015年)はLGBTだといわれます。13人~20人に1人です。日本の苗字で多い「佐藤」「鈴木」「高橋」「田中」さんは、合計600万人いるといわれますが、LGBTの推定人口はその数に匹敵する規模というわけです。

 

・本書が、おそらく日本で初めての、「ビジネス書・人事」の欄に置かれるLGBTの本になると思います。

 

<LGBT人口はどれくらい?>

・性的少数者(性的マイノリティ)と言うぐらいですから、ストレートに比べたら少ないのでしょうが、実際にはどれくらいいるのでしょうか。人口の3%~10%というデータを目にしたことがあるのかもしれませんが、これほどの幅が生まれるのはなぜなのでしょう。それは、LGBT人口の統計というのは、さまざまな意味で正確な数値を出すことが困難になっているからです。

 

・アメリカではその後、何度も同性愛人口についての調査が行われてきました。最近の2003年の調査があり、性的に活発なアメリカ国民男性の4.9%が18歳以降に同性との性的行為を持ったことがあると回答しました。

 

・イギリスでは、財務省などがシビル・ユニオン制定の影響を調べるため、2005年に行った調査によると、イギリスにいるレズビアン、ゲイの数は360万人で、国民の約6%が同性愛でした。

 

<古代ギリシアからルネサンス期>

・自然界にももともとたくさんあるように、人間界にも古来から同性愛はありました。よく知られているのは古代ギリシアです。プラトンは『饗宴』のなかで少年愛を美と結びつけて賛美しています。ポリス(都市)では、年長者が庇護者として少年を愛することが称揚され、それは少年を立派な市民に育て上げるという教育的な意味ももっていました。

 

・しかし、キリスト教が誕生し、同性愛を退廃とみなす中世の暗黒時代へと入っていきます。聖書の「ソドムの市」の記述から同性愛は「ソドミー」と呼ばれ、火あぶりなどの刑が科せられることもありました。

 

・『ホモセクシャルの世界史』を著した海野弘氏は同書で「キリスト教がホモフォビアを作ったのではなく、キリスト教が生んだ抗争がホモフォビアを助長したのかもしれない」と述べています。

 

・ルネサンス期はネオプラトニズムの影響で同性愛に寛容なムードが広まる一方で、取り締まりも行われました。レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロといった芸術家たちの同性愛は広く知られるところです。

 イギリスでは、エリザベス朝時代のクリストファー・マーロウやシェイクスピア、17世紀のフィリップ1世(オルレアン公)、ジェームズ1世、ウィリアム3世の同性愛が有名です。18世紀には産業革命を背景に、今日のゲイバーの原型である「モリー・ハウス」が誕生し、庶民も同性愛や異性装を謳歌するようになったことが知られています。

 

<近代から現代>

・近代になると、家父長制と資本主義、ナショナリズムが結びつき、一夫一婦制が定着し、ジャーナリズムの発展とともに国家と大衆が同性愛者を非難・弾圧するようになり、ホモフォビア(同性愛嫌悪)が蔓延します。

 

19世紀末、オスカー・ワイルドが同性愛のかどで逮捕・投獄され、フランスではヴェルレーヌがランボーとの恋の終幕に拳銃を発砲し、逮捕されました。20世紀初頭には、ドイツで皇帝ヴィルヘルム2世の閣僚や側近が同性愛者として糾弾される一大スキャンダル、「オイレンブルク事件」が起こりました。第1次世界大戦の遠因ともなる、国家を揺るがすような事件でした。イギリスでは、経済学者のケインズ、作家のヴァージニア・ウルフやE・M・フォスターらの同性愛者・両性愛者が中心となったブルームズベリー・グループが活動し、パリではディアギレフやニジンスキー(ともに同性愛者)のバレエ団バレエ・リュスがセンセーションを巻き起こしました。

 

・女性に目を向けると、「ロマンチックな友情」と呼ばれて称賛された女性同士の友愛が19世紀に頂点を迎え、経済的自立を果たした中産階級の女性たちは共に暮らしはじめます(アメリカ東海岸では「ボストンマリッジ」と呼ばれます)。1920年代にはニューヨークなどにレズビアンコミュニティが誕生します。

 

・しかし、精神科医による同性愛者や異性装者というカテゴライズは、のちにそうした人々が異常だとか病気であると見なされることにもつながりました。そしてナチスは性科学研究所を破壊し、何万人もの同性愛者を収容所で虐殺……歴史上類を見ない悲劇が起こったのです。

 

・第2次世界大戦が終わり、男女平等や公民権運動が進んでもなお、依然として同性愛は違法であり、第2次世界大戦の英雄であったアラン・チューリングが同性愛のかどで逮捕され、ホルモン治療を強制され、自殺に追い込まれるという悲劇も起こりました

 

<LGBTの日本史>

・日本は欧米に比べ、LGBTに寛容な国だといわれてきましたが、おそらくその理由には、日本人が異性装、ことに女装が大好きだからということもあるでしょう。三橋順子氏は著書『女装と日本人』(講談社刊、2008年)において、ヤマトタケルの女装を端緒に、古代日本の女装した巫人(シャーマン)、王朝時代の稚児、中世の持者、江戸時代の陰間………と現代まで連綿と続く女装の系譜を検証しながら、日本文化の基層に「性を重ねた双性的な特性が、一般の男性や女性とは異なる特異なパワーの源泉になるという考え方=双性原理」があると述べています。

 

<「男色」大国だった日本>

・そのことも深く関係しますが、かつて日本は世界に冠たる「男色」大国でした。有史以来、日本の歩みは男色とともにあり、日本の歴史は男色文化に左右されながら、時にはそれが原動力となって動いてきました。

 古代の豪族からはじまり、空海が唐から男色文化を持ち帰って以来、稚児を愛するライフスタイルが爆発的な広がりを見せ(稚児は「観世音菩薩の生まれかわり」として崇拝され、僧侶の間では男色は神聖な儀式でした)、僧侶から公家、貴族、そして武士にも伝播しました。室町時代には喝食(かつしき)と呼ばれる美少年がもてはやされ(足利義満と世阿弥が有名)、戦国時代には武将が小姓を寵愛し(織田信長と森蘭丸をはじめ、ほとんどの武将が小姓を抱えていました)、やがて「衆道」へと至ります。「衆道」は念者と若衆の愛と忠節によって成立する崇高な男の契りであり、ちょうど古代ギリシアのように、少年を庇護し、立派な武士に育て上げる(軍の団結を強化する)意味合いももっていました。

 

・日本の男色は、政治をも大きく動かし、独自の文化を花咲かせ、日本的美意識とあいまって「宗道」と呼ばれる武士の人生哲学となり、江戸時代には若衆歌舞伎という一大娯楽産業(そして色子、陰間という売色のシステム)も誕生しました。この時代、色道の極みは男色と女色の二道を知ることだと言われ、陰間茶屋が栄えました。陰間の中には女形を目指して女装した者もいました。稚児などもそうですが、美少年はしばしば女装もしており、男色は現代とは異なり、疑似異性愛的なものでした。日本の男色史は女装史と不可分なものだったのです。

 

<明治以降~現代>

・明治維新以後も「衆道」の名残りが薩摩藩などを中心に見られ、大正時代まで続きました。しかし、明治政府は、江戸以前の男色の文化を封建的な江戸の奇習、西南日本の悪習(それに影響された学生の悪習)、「文明」に対する「野蛮」として周縁化しました。富国強兵・殖産興業の国策の下、どんどん同性愛者は生きづらくなり、戦時中は「非国民」と呼ばれ、弾圧されました。

 

・戦後、待ってましたとばかりに同性愛者や女装者が活動をはじめますが、三島由紀夫の「禁色」に描かれているように、まだアンダーグラウンドなものであり続け(歴史の教科書も男色を隠蔽し続け)、ほとんどの同性愛者は偽装結婚を余儀なくされました。それでも、女装したママのゲイバーやブルーボーイのショークラブ、二丁目のゲイバー街ができ、丸山明宏(美輪明宏)のようなタレントが登場し、ニューハーフやミスターレディがメディアを賑わせるようになり、というかたちで次第に世間に浸透していきました。(その後もカルーセル麻紀、おすぎとピーコ、ピーターらをはじめ、現在のマツコ・デラックスに至るまで、数多くのオネエタレントが活躍してきました)。

 

<同性愛の世界地図>

・西欧や北米、中南米、オセアニアでは同性婚または同性パートナー法が認められている国もありますが、中東やアフリカ、東欧では、まだ同性愛者を弾圧する国がたくさんあります。近年、この二極化が進みつつある一方で、日本をはじめとする東アジア・東南アジアでは、ひどい差別もないが保護する制度もない、という状況が続いています。

 

・同性愛が違法となっている国(国外追放や終身刑、死刑などの極刑に処せられる可能性がある)

イラン、サウジアラビア、イエメン、スーダン、ナイジェリア、モーリタニア、ソマリア。

 

<日本アイ・ビー・エム株式会社>

1950年代には米国企業としてもいち早く、個人の尊重、機会の均等をコーポレートポリシーとして宣言し、すでに80年代にはLGBTにも注目し、差別禁止規定のなかに「性的指向」「性自認」という文言を入れています。ダイバーシティ施策の一環でLGBTへの特化ではなく、人種の違いや障がい、女性と同様に尊重するものでした。

 マイノリティの従業員の定着、意識向上を考え、ロールモデルをいかに輩出していくか、平等な福利厚生、継続性、LGBT市場の開拓やブランディング、賛同してくれる仲間の企業をつくる、といったことに取り組んでいます。客観的な調査機関のサーベイ(調査)にも積極的に応じて、差別のない職場環境の整備と維持を心がけています。

 

<さまざまな企業の取り組みを知ろう>

・そこに風穴を開け、いち早くLGBTへの働きかけを行ったのが、今はなきリーマン・ブラザーズ証券でした。2004年に入社したヘイデン・マヤヤスさんが、社内でLBGLN(リーマン・ブラザーズ・ゲイ・アンド・レズビアン・ネットワーク)という当事者ネットワークを立ち上げ、LGBTの従業員同士で親交を深め、同性カップルの結婚を祝福したり、識者を招いて講演会を催したりしていました。そして「多様な人材を抱えることができれば顧客提案の幅も広がる」との考えから、2006年3月には早稲田大学など7大学のLGBTサークルに声をかけ、社内のLGBT支援システムをアピールし、優秀な人材の確保に乗り出しました(2008年以降、リーマン・ブラザーズ証券の取り組みは、野村證券へと受け継がれていきます)。

 

<ゴールドマン・サックス証券株式会社>

・ゴールドマン・サックスは、多くのLGBTが活躍している世界有数の金融機関です。イギリスでは「LGBTが働きやすい会社トップ100」の6位に選ばれています。

 

・日本法人では2005年に社内LGBTネットワークが設立されました。

 

<野村証券株式会社>

2008年9月にリーマン・ブラザーズ証券が破綻したあと、野村證券がリーマン・ブラザーズの欧州とアジア拠点の部門を継承した際に、ダイバーシティ&インクルージョンのコンセプトとともにLGBTネットワークが野村證券に引き継がれることになりました。

 

 

 

『妖怪の理 妖怪の檻』

京極夏彦    角川書店  2007/9

 

 

 

<柳田國男の妖怪談義を巡って>

・現在、“妖怪”を語る時には必ずといっていい程引き合いに出されてしまう柳田國男も、最初から「妖怪」という言葉を使用していたわけではありません。

 例えば、有名な『妖怪談義』(1956/修道社)に収録されている論文の中で一番古い「天狗の話」が書かれたのは明治42年(1909)のことなのですが(それは井上圓了が活躍していた時代です)、その中に「妖怪」の2文字を見出すことはできません。のみならず初期、中期の論文において柳田は、天狗は天狗と記し、大太法師は大太法師と記すだけです。柳田國男がそうしたモノの総称として「妖怪」という言葉を頻繁に使い始めるのは、大正も半ばを過ぎてからのことなのです。

 

・ただ、柳田國男はその学問の創成期から民俗の諸層に立ち現れる“怪しいモノゴト”に深い興味を示してはいました。

 柳田はまた、それを怪しいと感じる人間の心の在りようを研究することに学問的意義を見出してもいたようです。加えて、柳田が比較的早い時期に「妖怪」という言葉を“述語”として採用しようとしていたこともまた、事実ではあります。

 

・そして柳田以外の民俗学者達が「妖怪」という言葉を術語として頻繁に使い出すのは柳田が昭和11年(1936)雑誌『日本評論』(日本評論社)に論文「妖怪談義」を発表して後のことと思われるのです。

 

・また当時流行し始めていた心霊研究、さらには海外のスピリチュアリズムなども、柳田の視野には収まっていたはずです。

 ならば、日本民俗学を学問として確固たるものにするために、そうしたある意味いかがわしさを含んだ学問と一線を画する必要が、柳田には確実にあったはずなのです。民俗の中の“怪しいモノゴト”を扱うにあたって、さらにはそれを“妖怪”と名づけるにあたって――「妖怪」という言葉を術語として使うために、柳田國男は、井上、江馬、藤澤、そして心霊科学、そのどれとも異なった道を模索せざるを得なかったのでしょう。

 

<『古今妖魅考』は平田篤胤が記した書物で、天狗に関する多くの記述がある>

 

・柳田が“妖怪”と“幽霊”を明確に区別したがったのは、過去(文献)だけを研究対象とした江馬のスタイルと決別するという主張の現れだったのではないでしょうか。それはまた、民俗学を近代的な学問――科学とするための一種の方便として捉えることも可能です。

 

<黎明期の民俗学を巡って>

・柳田は全国各地の習俗や言語など“民俗”に関わる事象をくまなく調査し(必ずしも自らが全国を巡ったわけではないのですが)、蒐集・蓄積した膨大なデータを様々な形で纏め、世に問うています。しかし、纏められた資料や論考を俯瞰した時、“性”と“差別”に関わる記述が驚く程に少ないということに気づくはずです。まったく触れられていないというわけではないのですが、それにしても扱われている情報は僅かで、扱い方も常に淡泊です。

 これは、それらの情報が蒐集の網から漏れた故に生じた“不備”ではありません。

 それはむしろ、意図的に“取捨選択”がなされた結果であるものと思われます。“性”や“差別”に関わる情報は、なにがしかの基準によって選り分けられ、隠蔽されてしまったようなのです。

 但し、その選別作業がどの段階で行われたのかは定かではありません。

 

・柳田の許に届く前、例えば蒐集の段階で捨てられてしまったという可能性も、もちろんあるでしょう。しかし、たとえそうであったのだとしても、何らかの基準なり指針を示したのが柳田であったことは想像に難くありません。

 柳田は“夜這い”などの性に関する習俗や、取り上げること自体があからさまな差別の誘因となり得る事象などに対しては極力言及しない――という方針を持っていたようです。これは柳田個人の(そうしたものを好まない)性質・信条に因るものだという見方もあるようですが、それを踏まえた上での、一種の“戦略”であったと捉えられることも多いようです。

 立ち上げ間もない民俗学を守るための――学問の一分野として成立させるための――それは学問的“戦略”だというのです。つまり民俗学が卑俗なものとして受け取られることを虞れたあまり、誤解を受けそうなテーマを緊急避難的に遠ざけた――ということになるのでしょうか。

 

・ただ、柳田國男が意図的に「妖怪」なる言葉を民俗学用語として採用し、ある程度積極的に使用したことは明らかな事実ですし、その結果として現在私たちが知る“妖怪”という概念が形成されたことも事実でしょう。

 

・性的習俗・差別的文化の取り扱い方が、柳田の学問的“戦略”であったのだとしても、また、単に柳田の個人的な嗜好の発露であったのだとしても、柳田がなにがしかの基準を以て蒐集した情報を取捨選択していた(あるいはさせていた)という事実に変わりはありません。

 そうした事実がある以上、ここでまず問題にしなければいけないのは、その“基準”そのものでしょう。

 それでは、その基準と果たしてどのようなものだったのかを考えてみましょう。

 

・筆者はその基準を、取り敢えず“通俗性の有無”と要約することができるだろうと考えています。

 通俗とは、“下品”であり“幼稚”であり“下劣”である――学問的でない――と言い換えることもできるでしょう。柳田國男は高名な学者であり、官僚でもあり、インテリゲンチャのホワイトカラーであり、現在でも、およそ通俗とはかけ離れた印象を以て受け入れられている人物です。柳田が通俗を厭うたというもの言いは、いかにももっともらしく聞こえることでしょう。しかし、それはあくまで“印象”に過ぎません。

 

・風俗史学が“下品”で“幼稚”だなどと述べているわけではありません。前述のとおり、風俗史学は(民俗学とは以て非なるものではありますが)きちんとした理念や体系を持つ、れっきとした学問です。

 ただ、明治期から昭和初期にかけて、風俗研究の名を借りた通俗的な言説が一種のブームとなっていたこともまた、紛れもない事実なのです。

 

・もちろん、性であれ差別であれ、研究者は決して下世話な興味本位でそれらを俎上に並べたわけではありません。風俗史学の内部では、それらはいずれも学問的な研究対象として、真面目に取り扱われています。しかし、研究者がどれだけ真摯な姿勢でそれらと向き合っていようとも、そうした対象を扱うという行為自体が、好奇=通俗の視線に晒される要因となるのだとしたら――通俗化を回避することは難しいといわざるを得ません。

 戦後のカストリ誌などで好んで扱われたネタの多く(猟奇趣味、犯罪心理、性愛記事、秘境探検記事など――)は、そうした“風俗研究ネタ”の直接的な焼き直しです。

 

・風俗史学が「過去のモノゴトを現代に紹介する」学問だとするなら、民俗学は「過去を知ることで現代を知る」学問です。風俗史学が「特定の場所や時代を研究する」ことに終始するのに対し、民俗学は「古層を探ることで現在を理解する」ためになされる学問なのです。

 実際、柳田以降もその二つは時に混同され、集合離散を繰り返すこととなります。

 

・柳田が“性”や“差別”を禁じ手としたのは、そうした手本があったからなのでしょう。それが柳田の個人的な嗜好であったのだとしても、学問の卑俗化を防ぐための戦略であったのだとしても――柳田の視野に風俗研究が収められていたことは疑いのないことのように思えます。

 

・柳田國男は、どういうわけか「妖怪」という言葉だけは捨て去ることをしませんでした。それどころか、柳田は晩年に至って「妖怪」という言葉に拘泥し始めるのです。先に挙げた基準が正しいものであるならば、「妖怪」は真っ先に捨てられていて然るべき言葉であったのでしょう。

 

<明治の雑誌をなどを巡って>

・明治30年代に入ると、圓了の著作以外の場でも「妖怪」という言葉が使用されるようになります。

 

・明治政府は圓了以上に迷信や旧弊を弾圧しました。明治期には、まじないや因習を禁止した政府令がいくつも出されています。反体制という場所に立って眺めるならば、圓了も明治政府も同じことをしているように見えたはずです。

 

・合理を前面に打ち出した圓了の場合、現象の背後には何もありません。「起こり得るか/起こり得ないか」の二者択一で、非合理なものは「起こらない」「ない」というのが圓了の立場です。

 平井の場合は多少違っています。神霊(心霊とは微妙に違う概念です)の有効性を信じる者にとっては、すべての事象はなにがしかの「意志の結果」なのです。「起こり得ないこと」であっても「起こるべきこと」は「起こる」ということになるでしょう。

 

・二人の違いとは、現象の背後にある“モノ”を想定しているかいないか、ということです。

 平井の文中にそうした“超越者”に対する記述はいっさいありません。しかし、先に述べたように、平井が後に心霊研究の方面に手を伸ばす人物であることは事実です。平井金三にとって大切だったのは、「何が起きているか」「それは起こり得ることなのか」ではなく、「何故起きたのか」、あるいは「何が起こしたのか」だったのではないでしょうか。

 健全な“妖怪”=“神仏”が「在る」のであれば、不健全な“妖怪”もまた「在る」ということになります。

 

・天狗の話も河童の話も、フォークロアや寓話としてではなく「本当にあったこと」として語られているわけです。

 

 現代に置き換えるなら「私は宇宙人に遭った」「自殺者の霊がトンネルに現れた」というのと同じ文脈で天狗や河童が語られているわけです。天狗も河童も実在するモノゴトとして、要するに“オカルト全般”として扱われているということ――即ち井上圓了の引いた枠組みの中で語られているということ――になるでしょう。

 

・圓了の仕事によって、“妖怪”の名の下にそれまで乖離していたいくつかの事象が統合・整理されたことは間違いないでしょう。それは、後にオカルトなる便利な言葉が一般化したために、超能力やUFO、心霊現象やUMAなど、本来無関係であるはずのものごとがひと括りにされ、新たな体系が編まれた事情と酷似してもいます。

 

<郷土研究の社告を巡って>

・その当時「妖怪」という言葉は、通俗の場においてこそ“化け物”というニュアンスを帯びつつあったものの、学問の場において、また枠組みとしては(結果的に)圓了の独壇場だったといえるでしょう。しかし柳田は(たぶん敢えて)この枠組みから外れた使い方をしてみせます。

 

・民俗学は(というよりも柳田國男は)もちろん近代的学問を目指しはしたのでしょうが、決して前近代を否定する立場をとっていたわけではありません。民俗学にとって前近代は否定するものでも肯定するものでもなく、近代を知るための“研究材料”だったのです。

 

・たしかに圓了といえば迷信否定――今でいうならオカルト否定派の急先鋒です。心霊研究とはおよそ馴染まないように思えます。しかし、繰り返し述べている通り、圓了が厳しく糾弾したのは“前近代”なのです。

 心霊科学という言葉からも判る通り、心霊研究は、“科学的”な発想をその根底に持っています。

 

<再び柳田と民俗学を巡って>

・明治末から柳田が抱えていた「山人」という大きな研究テーマ――『後狩詞記』(1909/自費出版)や『遠野物語』(1910/聚精堂)などを生み出す原動力ともなり、南方熊楠との、いわゆる「山人問答」を通じて明確化したテーマ――に、柳田はここで終止符を打ちます。そして研究対象を平地人=常民へと移して行くのです。

 そうした様々な変遷の中、柳田は「妖怪」という言葉とは距離を置き続けます。と――いうよりも、柳田は、「妖怪」という言葉をまったくといっていい程使っていないのです。

 

・昭和9年(1934)、柳田は現在もなお妖怪研究の基本文献のひとつとされる『一目小僧その他』(小山書店)を上梓します。

 一つ目小僧、目一つ五郎、隠れ里、橋姫、ダイダラボッチと――論文中で扱われているのはいずれも(現在の感覚では)紛う方なき“妖怪”ばかりですが、やはり「妖怪」という言葉は一切使用されません。

 

・金城は、最初に挙げた「マジムン」を「妖怪変化の総称」としています。続く「ユーリー」は、マジムンと同義であるとしながらも(那覇では)「人間の死霊」に限定する呼称であると述べています。

 

<様々なコトバを巡った後に>

・柳田は、“妖怪”に対する自らの指針を正当化するために、まず“幽霊”を“お化け”のカテゴリから切り離さなければならなかったのではないか――。

 そのような観点から柳田の仕事を見直した時、“妖怪”と“幽霊”に関する柳田の定義も、かなり脆弱な論拠の上に成立している限定的な言説として捉え直されてしまいます。

 柳田の定義は概ね次のように要約されて、広く人口に膾炙されてしま

います。

 

① 幽霊は人に憑くが妖怪は場所に出る。

② 幽霊は深夜に出るが妖怪は薄暮に現れる。

この二点は“妖怪”と“幽霊”の決定的な差異として様々な場面で引用されています。

 

・人に取り憑くモノは“幽霊”ばかりではありません。狸も狐も、鬼も天狗も河童も、わけの判らないモノだって人に憑きます。“憑き物”を外しても、個人につきまとう“幽霊”以外のモノはいます。一方で同じ場所に出続ける“幽霊”もたくさんいます。そうした“幽霊”は不特定多数に祟ることもあります。昨今の言葉でいうなら“地縛霊”ということになるでしょうか。柳田の定義を押し通すなら、“地縛霊”は“幽霊”ではなくなってしまいます。

 また、出現時間に関しても同じことがいえるでしょう。深夜に訪れる恐ろしいモノが、すべて“幽霊”かといえば、そんなことはありません。夕暮れに目撃される“幽霊”も多くあるでしょう。それは今にかぎらず、過去にも多くあったのです。

 定義から漏れるものは認めない、という態度もあるのでしょうが、そうするとかなり無理をして分類し直さなければならなくなります。

 

・ただ、生涯を「妖怪学」に捧げた井上圓了と違い、柳田國男の“妖怪”研究は、その膨大な仕事のうちの、ほんの一部にしか過ぎません。しかし、割合としては少ないまでも、柳田にとって“妖怪”が一種「特別な」研究対象であったことは疑いようがありません。

 

 

 

『遠野物語拾遺   retold

柳田國男 × 京極夏彦  角川学芸出版   2014/6/10

 

 

 

171

この鍛冶屋の権蔵は川狩り巧者であった。夏になると本職の鍛冶仕事にはまるで身が入らなくなる。魚釣りに夢中になってしまうのである。

ある時。

権蔵は山の方の川に岩魚釣りに行った。編籠に一杯釣ったので切り上げ、権蔵は村に向かって山路を戻って来た。

 村の入り口を示す塚のある辺りまで来ると、草叢の中に小坊主が立っている。はて誰だろうと思って見ると、小坊主はするすると大きくなって、雲を突く程に背の高い入道になった。権蔵は腰を抜かして家に逃げ帰ったという。

 

87

綾織村砂子沢の多左衛門どんの家には座敷童衆がいる。この座敷童衆は元お姫様である。これがいなくなったら家が貧乏になった。

 

136

遠野の豪家である村兵家の先祖は、貧しい人であった。ある時。その人が愛宕山下の鍋ヶ坂という処を通り掛かると、藪の中から、「背負って行け、背負って行け」と、叫ぶ声がする。

いったい何があるのかと立ち寄って見てみると、仏像が一体あるのであった。その人は言われる通りそれを背負って持ち帰り、愛宕山の上に祀った。それからその人は富貴を手に入れ、家はめきめきと栄えて、後裔は豪家となったのである。

 

88

その遠野町の村兵の家には、御蔵ボッコというものがいた。籾殻などを散らしておくと、翌朝。そちこちに小さな児の足跡が残されているのを見ることが出来たという。後に、それはいなくなった。それから家運が少しずつ傾くようになったそうである。

 

89

砂子沢の沢田という家にも、御蔵ボッコがいたという。人の目に見えるものではなかったようだが、ある時姿を見ることがあった。赤塗りの手桶などを提げていたという。見えるようになったら、竈が左前になったそうである。

 

90

同じ綾織村の、字大久保にある沢某の家にも蔵ボッコがいた。時々、糸車を回す音などがしたという。

 

91

附馬牛村のいずれかの集落にある某の家のこととして伝わる話である。先代の当主の頃、その家に一人の六十六部がやって来て泊まった。

しかし、来たところは見ているが、出て行く姿を見た者がいない。

そういう噂である。それ以来その家が栄えたとかいう話は聞いていない。ただ、貧しかったということもないようである。

 近頃になって、この家に幼い女児が顕れた。十になるかならぬかくらいの齢で、紅い振袖を着て、紅い扇子を持っていたという。女児は踊りを踊り乍らその家から出て来て、下窪という家に入った。

 

これも噂である。しかしそれ以降、このニ家はケェッチャになったと村の者は謂う。ケェッチャとはあべこべ、裏表というような意味であるから、貧富の差が逆転したというような意味なのだろう。

 その下窪の家に近所の娘が急な用で行った折、神棚の下に座敷童衆が蹲っているのを見て吃驚し、逃げ戻って来たという話もある。

 そういう話があるのだから、下窪の家は裕福になったということなのだろう。

 

93

遠野一日市にある作平という家は裕福である。しかし、元々暮らし向きが豊かだった訳ではない。この家には栄え始めた契機があると謂う。

 ある時、土蔵に仕舞ってあった大釜が突然鳴り出した。家の者は勿論、近所の者も皆驚いて見に行ったそうである。音は止むどころか段々に強くなり、小一時間も鳴り続けたと謂う。

 その日から家運が上昇した。作平の家では山名という面工を頼み、釜が鳴っているところの絵を描いて貰い、これを釜鳴神と称して祀ることにしたそうである。今から二十年くらい前のことである。

 

94

土淵村山口にある内川口某という家は、今から十年程前に瓦解した。家屋も一時空き家になっていた。寄り付く者もいないから、当然人気も全くない。しかし誰も住んでいない筈のその家の奥座敷に、夜になると幽かな火が燈る。そして、誰の声かはわからないが、低い声で経を誦むのが聞こえる。往来のすぐ近くの家であったので、耳にする者も多かった。近所の若い者などが聞き付け、またかと思って立ち寄ってみると、読経も止み、燈火も消えている。同じようなことは栃内和野の菊池家でも起こった。

菊池家も絶え、その後に空き家から経が聞こえたりしたそうである。

 

92

遠野新町にある大久保某の家の二階の床の間の前で、夜な夜な女が現れ髪を梳いているという評判が立った。

 近所の両川某という人がそれを疑い、そんなことがあるものかと言って大久保家に乗り込み、夜を待った。

 夜になると、噂通りに見知らぬ女が髪を梳いている。女はじろりと両川氏を見た。その顔が何とも言えず物凄かったのだと両川氏は語った。

明治になってからの話である。

 

162

佐々木喜善君の友人に田尻正一郎という人がいる。その田尻氏が、7,8歳くらいの頃。村の薬師神社の夜籠りの日だったそうである。

夜遅くに田尻少年は父親と一緒に畑中の細い道を通り、家路を急いでいた。すると、向こうから一人の男が歩いて来るのに出会した。シゲ草がすっかり取れていて、骨ばかりになった向笠を被った男であった。

 一本道である。擦れ違うために田尻少年は足を止め、道を開けようとした。すると男は、少年が道を避けるより先に畑の中に片脚を踏み入れ、体を斜めにして道を譲ってくれた。

 通り過ぎてから田尻少年は父に、今の人は誰だろうと尋いた。父は妙な顔をして誰も通った者はないと答えた。そして、「俺はお前が急に立ち止まるから、どうしたのかと思っていたところだが」と言ったという。

 

163

先年、土淵村の村内で葬式があった。その夜。権蔵という男が、村の者4,5人と連れ立って歩いていた。不幸のあった家まで念仏を唱えに行く途中のことである。突然、権蔵があっと叫んで道端を流れていた小川を飛び越えた。他の者は驚いて、いったいどうしたんだと尋ねた。

 

権蔵は、「今、俺は黒いものに突き飛ばされたんだ。俺を突き飛ばしたアレは、いったい誰なんだ」と答えた。他の者の眼には何も見えていなかったのである。

 

137

つい、近頃の話だと謂う。ある夜。遠野町の某という男が、寺ばかりが連なっている町を歩いていた。墓地を通り抜けようとすると、向こうから不思議な女が歩いて来るのに出逢った。男が何故不思議と感じたのかはわからない。しかし近付いて能く見ると、それはつい先日死んだ、同じ町の者であった。

 男は驚いて立ち止まった。死んだ女はつかつかと男に近づき、「これを持って行け」と言って汚い小袋を一つ、男に手渡した。恐る恐る受け取って見ると、何か小重たいものである。しかし、怖さは増すばかりであったから、男は袋を持ったまま一目散に家に逃げ帰った。

 家に戻り、人心地付いてから袋を開けてみると、中には銀貨銅貨取り混ぜた多量の銭が入っていた。その金は幾ら使っても減らない。

貧乏人だった男が急に裕福になったのはそのお蔭だと噂されている。

これは、俗に幽霊金と謂い、昔からままあるものである。

一文でもいいから袋の中に銭を残しておくと、一夜のうちに元通りいっぱいになっているのである。

 

 

 

『遠野のザシキワラシとオシラサマ』

(佐々木喜善) (宝文館出版) 1988/4

 

 

 

<奥州のザシキワラシの話>

<子供の時の記憶>

・私達は、幼少の時分、よく祖父母から炉辺話に、ザシキワラシの事を聞かせられたものである。そのザシキワラシとはどんなものかと言えば、赤顔垂髪(さげがみ)の、およそ56歳の子供で、土地の豪家や由緒のある旧家の奥座敷などに出るものだということであった。そのものがおるうちは家の富貴繁昌が続き、もしおらなくなると家運の傾く前兆だとも言われていたという。私達は、初めはその話を只の恐怖を持って聞いていたものであるけれども、齢がやや長けてくると、一般にこの種のものに対していだくような、いわゆる妖怪変化という心持ではなく、何かしらそのものの本来が私達の一生の運不運と関係があるので、畏敬の念さえ払うようになったのである。世間でもまたこの通りとか、何処の何某の家にそのものがおるといえば、他では羨望に表した、多少の畏服を感じ、また本元でも吉端として、ひそかに保護待遇に意を用い、決して他の妖異におけるがごとく、駆除の祈祷や退散の禁呪などは求めぬのである。

 

<●●インターネット情報から●●>

 

ウィキペディアWikipedia(フリー百科事典)から

夜這い(よばい)とは、夜中に性交を目的に他人の寝ている場所を訪れる日本の風習。

語源は、男性が女性に呼びかけ、求婚すること(呼ばう)であると言われる。

古くは、759年に成立した『万葉集』巻12に「他国に よばひに行きて 大刀が緒も いまだ解かねば さ夜そ明けにける」と歌われており、大正時代まで農漁村中心に各地で行われていた習俗。戦後、高度成長期直前まで、各地の農漁村に残っているところがあった。明治維新の近代化や農漁村への電灯の普及などにより明治以降は衰退する傾向にあった。このため、明治、大正の頃まで盛んだったのは、山深い山間部の村落中心であった。

 

多くの場合男性が女性のもとへ通うものだが、女性が通う風習を持つ地域もあった。

婚、嫁、結婚などの字を古くは「よばふ」「よばひ」と呼んだ。これは「呼ぶ」の再活用形で「つまどい」「つままぎ」などの語と共に求婚のために男が女のもとに通うことを意味した。昔の婚姻は結婚後も男が女のもとに通うのが普通であり、このことも「よばい」と言われた[要出典]

 

古代日本の夫婦関係は妻問い婚であり、男女はそれぞれに住んでいて妻の元へ夫が通ってゆく形態であった。結婚というのは、家族に隠れてこっそりと夜這いを行うのではなく、堂々と通えるようになることを意味した。そもそも各地の共同体(ムラ)においては一夫一婦制と言う概念も希薄で、重婚、夜這いは当たり前であった。

 

かつての農村では、「村の娘と後家は若衆のもの」という村落内の娘の共有意識を示す言葉が聞かれることがあった。近代化以前の農村には若者組があり、村落内における婚姻の規制や承認を行い、夜這いに関しても一定のルールを設けていた。ルールには未通女や人妻の取り扱いなどがあり、この辺りの細かい点は地域によって差がみられた。下川耿史によれば、夜這いが盛んになったのは南北朝時代から鎌倉時代にかけての中世であり、村落共同体の若者組は、風流と呼ばれる華やかな祭りのリーダーだったという。

 

江戸など都市部では、村落と違う形に発達していった。これが、夜這いの衰退に繋がったと考えられるとする見方がある。1876年(明治9年)、現在の新潟県(相川県)で、夜這いを禁止する法律ができた。1938年(昭和13年)に起きた津山事件について、大阪毎日新聞が「山奥にいまなお残されている非常にルーズな男女関係の因習」と報じ、サンデー毎日が「娯楽に恵まれない山村特有の『男女関係』」と報じるなど、夜這いは否定的に見られるようになっていった。

 

 

 

津山事件(つやまじけん)または津山三十人殺し(つやまさんじゅうにんごろし)は、1938年(昭和13年)521日未明に岡山県苫田郡西加茂村大字行重(現・津山市加茂町行重)の貝尾・坂元両集落で発生した大量殺人事件。犯人の姓名を取って都井睦雄事件ともいう。津山市など近隣地域では「加茂の三十人殺し」と呼ばれている(または死者の数に尾ひれがつき水増しされ「三十二人殺し」「三十三人殺し」また「三十六人殺し」とも呼ばれる事がある)

 

2時間足らずで28名が即死し、5名が重軽傷を負う(そのうち12時間後までに2名が死亡)という、犠牲者数がオウム真理教事件(27名)をも上回る日本の犯罪史上前代未聞の殺戮事件である。 事件は犯人の逮捕にはいたらず、現場から逃走した犯人の自殺で幕を閉じた。

津山事件は、そのセンセーショナルな事件の内容から、小説・ドラマ・ゲームなど多くの作品で扱われたり、題材・モデルとされている。

 

<『八つ墓村』 横溝正史、角川文庫、1971年 >

・冒頭部で語られる村人32人殺し事件は、本事件がモデルとなっている(小説は事件の後日談の形を取っており、本事件そのものが全体のモデルになっているわけではない。また、犯人の境遇はまったく違う設定である)。

 

<『丑三つの村』 西村望、毎日新聞社、1981年(徳間文庫、1984 ISBN 4195675936)> 本事件を題材にしたノンフィクション小説。

 

1983年に監督・田中登、主演・古尾谷雅人で映画化された。封切り前に映倫が「全編が残虐で非道的」と判断、18歳未満の観覧を禁止する成人映画に指定された。

 

<「負の暗示」『神かくし』所収山岸凉子、秋田文庫、1998 ISBN 4253172466 >本事件を漫画化した作品。

『八つ墓村』(やつはかむら)は、横溝正史の長編推理小説。「金田一耕助シリーズ」の一つ。

 

本作を原作とした映画が3本、テレビドラマが6作品、漫画が5作品、舞台が1作品ある(20143月現在)。9度の映像化は横溝作品の中で最多である(次いで『犬神家の一族』が映画3本、ドラマ5本)。

1977年の映画化の際、キャッチコピーとしてテレビCMなどで頻繁に流された「祟りじゃ〜っ! 八つ墓の祟りじゃ〜っ!」という登場人物のセリフは流行語にもなった。

 

花街(花町とも書く)(かがい、はなまち)とは、芸妓屋、遊女屋が集まっている区域を指す名称である。花柳(かりゅう)という別称もある。売春防止法(1957年施行)までは多くの花街に芸妓と娼妓の両方がいたが、今日花街と呼ばれている地域は芸妓遊びのできる店を中心に形成される区域である。なお、料理屋・待合茶屋・芸者屋(置屋)がまとめて「三業」と称されるため、花街のことを「三業地」ともいい、地域により茶屋と置屋で「二業地」と呼ぶ。

 

 

 

『文藝春秋』 平成273月特別号

『戦後70年の疲労 今こそ「第4の矢」が必要だ』

牛尾治朗 茂木友三郎 佐々木毅

 

 

 

<財界、官界、学界、労働界の有志が緊急提言>

・「日本アカデメイア」の92人が3年間討議を重ねた日本の未来。その議論が3人の提言となって結実した。

 

・この国は、戦後の日本社会に対する必要以上の幻想、つまり「余剰幻想」から抜け出せずにいるように思えるのです。

 少子化による人口減少、膨大な財政赤字、持続可能性が憂慮される社会保障制度――いずれも、ここまで事態が深刻化したのは、新しい時代にふさわしい思考に切り替えられなかった日本人の「余剰幻想」の産物にほかなりません。

 

・少子高齢化によって、高度成長時代にデザインされた社会を大幅に見直さなければ、社会保障全体の維持が覚束ないことは、ずいぶん昔から明らかでした。すでに、社会保障給付額は14年には115兆円にまで膨らみ、25年には149兆円になるとされています。

 

<「人を説得する政治」へ>

・この政治不信の根底には、「大事なことを本音で語る政治家は少ない」という有権者の悲痛な叫びがある。

 

・このままでは日本は壊れてしまう。そのことに国民は気付いています。従って一刻も早く民主制を作り変えなければなりません。「人を説得する政治」を実現して、シルバーデモクラシーからヤングデモクラシーへというように日本の新しい長期ビジョンを打ち立てなくてはならないのです。

 

<制度疲労を乗り越える「三つの提言」>

この難局を乗り切るため、2030年の日本の自画像を描く

<提言1 戦後の生き方・働き方はもう古い>

・日本の会社員は戦後70年もの間、一斉採用、終身雇用、そして定年制という、いわば20世紀型の仕組みのなかにあり続けて来ました。この画一的な働き方が制度疲労を起こし、日本人の幸福を奪っていると考え、これまで当たり前だと思ってきた「定年」という固定観念の見直しを提言します。

 

・年金生活という言葉を死語にし、若い時代から最低70歳、75歳くらいまでは健康でいきいきと働く。そして、社会に対して死ぬまで価値を生み出し続けていく。私たちの提案は、働き方にとどまらず、日本人の生き方の幅を広げる提案でもあります。

 

<若者、女性が社会の主役に>

・人口減少の抜本的な対策は、直ちに各界が始めねばなりませんが、簡単に解決できる問題ではありません。

 

<提言2 情報革命で本気の歳出削減を>

・税と社会保障、そしてその先にある財政再建をどうやって成し遂げるかは喫緊の課題です。毎年、社会保障給付額が2兆円から3兆円増えるといわれる現状では、今のシステムは早晩、行き詰まることが目に見えています。今の水準を維持し続けることはもはやできません。

 

・私たちは、その点を改善する前提として、税と社会保障の透明性を高めること、そのためにIT技術をフル活用することを提言します。日本の徴税システムはまだ抜け穴だらけといわれています。

 

・実は、そのために有効な制度が動き出そうとしています。国民全員に税と社会保障の共通番号を割り当てるマイナンバー制度が161月から本格導入されるのです。

 

<ビッグデータ活用で生活者本位の医療を>

・さまざまなデータを電子化して蓄積すれば、ビッグデータの活用によって、さらなる歳出削減の可能性が広がります。

 

<提言3 政治の時間軸を立て直す>

・政党のガバナンスも根本から見直すべき時期に来ています。例えば、バラバラに規定された今の政党の姿を統一的な政党法制に置き換えることや、現在の政党助成制度の見直しも検討すべきです。

 

<霞ヶ関の整理を>

・その結果、総理大臣、官房長官とその周辺が内閣官房と内閣府の仕事に忙殺される事態となっています。内閣官房と内閣府には、ありとあらゆる業務が乱立しています。

 

・内閣官房・内閣府の肥大化の問題に限らず、省庁の制度疲労は多くの官僚の指摘するところでもありました。機能不全に陥っている省庁については再々編も検討されてしかるべきです。

 

<「見えないもの」の価値を見直す>

・いま日本社会の「品位ある」存続可能性が問われています。国民の中に眠っている潜在力を最大限引き出す時期にきているのです。その意味で、国民の本当の意識の転換なしには、成し遂げられるものではありません。「パンとサーカス」にたとえられる民主政の根源的問題と向き合い、1人ひとりが受け身的な統治客体意識と決別しなければなりません。

 

<日本アカデメイア「長期ビジョン研究会 報告書」主な提言>

<日本力>

・(目標)次世代の生き抜く力を高め、選択の自由を最大にする社会を。文化の特質を軸に総合力としての「日本力」を構想。

 

7075歳までいきいきと働ける多様な労働の場を拡大。年金受給開始年齢引き上げ。

 

社会保障・税の抜本改革を行う。負担と給付のバランスを見直し、持続性を高める。

 

③ 基礎科学分野の人材育成を強化。産官学で科学技術力を結集して生産性を高める。

 

④ 農業を6次産業化・知識集約化し、食文化、食産業をグローバル展開。

 

⑤ 伝統的観光資源と先端的文化表現などの革新的観光資源を開拓し、海外に発信。

 

<国際問題>

・(目標)東アジア地域に「安定を提供する日本」。米国と協力、豪・印・アセアンと連携し、中国に呼びかけ、普遍的価値を共有する開かれた「多次元的国際秩序」をめざす。

 

① 日本独自の柔軟な価値観外交を展開。価値観を押し付けるのではなく、民主主義や人権、法の支配等の普遍的価値を辛抱強く説く「ファシリテイター」を担う。

 

② 国内外の歴史的資料のアーカイブを創設。中高等教育で近現代史の歴史教育を充実。

 

③ 課題先進国として医療・福祉・介護問題を解決したモデル国として貢献。

 

④ 対外発信を強化。政府に知的情報発信戦略の中心となる機関を設置。

 

IT技術を活用し日本語遠隔教育を無料提供。日本の放送コンテンツを世界に発信。

 

<価値創造経済モデルの構築>

・(目標)日本の経済社会に日常的なイノベーションを喚起・誘発する価値創造経済をつくる。その中核は個別企業の価値創造。

 

① 資源や労働力などの制約、高齢化など社会的課題のある分野のイノベーションに挑む。

 

② ロボット産業の国際競争力強化。サービス産業等広範な分野で活用し生産性向上。

 

③ 国際競争に打ち勝つ産官学の体制を整備。国際的に整合した知的財産権制度を確立。

 

④ 過当競争防止のため、競争に敗れた企業は退場し、経営資源を解放。

 

⑤ 誰でもイノベーションを起こす「ユビキタス・イノベーション社会」に企業風土を転換。

 

<社会構造>

・(目標)重層的な信頼社会の構築をめざす。各分野で担い手となる中核人材を育成。戦後の生き方・働き方を見直し、人口減少に立ち向かう。

 

① 小中高の各段階で過疎地等で合宿型の長期共同生活学習を実現。

 

② 大学は理系、文系などの2分法から脱却。意欲あるすべての大学生が外国に留学。

 

③ 生涯にわたって複数の学位取得が可能な社会人向け大学・大学院教育を充実。

 

④ 年間有給休暇100%取得、50%時間外割増賃金率など労働条件をグローバル化。

 

⑤ 地方で「準市民」を創設。一定の施策で「ふるさと投票制度」を検討。

 

<統治構造>

・(目標)政党政治の危機克服に向けて、合理的決定と主権者意識の確立を両立させるデモクラシーの構築をめざす。

 

① 各庁設置法を廃止。閣外大臣制の導入。国会審議を計画化し党首討論を定期開催。

 

② 衆議院選挙における惜敗率を廃止。定数是正自動化制を導入。

 

③ 参議院は憲法改正を視野に半数改選制廃止や法案採決儀要件の緩和等を検討。

 

④ 政党法制を検討。政党交付金の配分を得票比率中心に改め、政権交代基盤を安定化。

 

18歳選挙権を早期実現。主権者としての政治教育を促進。立候補支援制充実。

 

 

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